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タイトルなし

20060914021351
異変を感じたのは深夜2時を少しまわった時だった。

僕はベットの上に横たわりながら、眠りに落ちる直前の甘美を味わっている所だった。突然「ガサ」っとビニールの擦れる音がしたのだ。最初は気のせいかと思い気にせず眠りに落ちようとしていた。ところが続けて畳みが擦れる音がしたのだ。それは小さな音だったが真夜中の静寂の中では充分すぎるほどの大きさだった。
疑いは確信へと変わる。「何かいる」。恐る恐る電気をつける。その瞬間驚きのあまり言葉を失う。

灰皿の上に奴はいた。

どうするべきか瞬時に考える。時間はない。奴が動き出してしまえばもはや捕まえるのは至難の技である。ただ動いていない奴を捕まえるのも容易ではない。どうするべきか…。机の上でスプレーを噴射するのは賢いとは言えない。ただ他に方法が…。
とりあえず近くにあったビニール袋を手にする。「これしかない」。灰皿ごとこれに入れてしまおう。慎重に手を伸ばし、ビニール袋をかぶせようとした瞬間、奴は見事にそれをかい潜りベットの下へと逃げていった。「しまった…」。後悔した時にはすでに奴は目の届かない所へ行ってしまっていた。目の前には倒れた灰皿と撒き散らされたたばこの灰。あまりにも大きすぎる代償だった。ショックのあまりしばしその灰を呆然と見つめていた。
ただこのまま寝られるほど神経が図太くはない。なんとしても捕まえなくては。消えかかった闘志が徐々に蘇ってくる。とりあえず散らかった灰をコロコロで拭き取ることにする。「しかしコロコロを考えた人は凄いな」と、そんなことを考えて少し心が晴れる。
準備はととのった。スプレーを片手に静かにその時を待つ。目線の先に広がるベットの下の未知なる暗闇の世界。昔はそこにHな本を隠していた。多分親にはばれていたけど。
無音の部屋の中確かに聞こえる畳みの上を歩く音。奴はまだ近くにいる。
どれくらい待っただろう。額には汗がにじんでいる。奴は静かに現れた。スプレーを持つ手に力が入る。焦りは禁物だ。ここで奴を逃がしたら多分この先の人生でいい事はないだろう。大袈裟だがこの時にはそれぐらいの思いに感じられた。

「世界のどこかで起きている戦争より、目の前にいる奴を退治できるかどうかということの方がよっぽど大問題である」と、言った人は残念ながらいない。

じっと待つ。奴が近付いてくるのを。
終わりは以外に唐突に訪れた。噴射されたスプレー。舞い上がる埃。無我夢中でスプレーを押し続ける。気付いたら奴は仰向けで動かなくなっていた。「終わった」安堵の息を漏らす。
二重に包んだビニール袋に奴を入れ、長かった戦いに幕を降ろす。
渇いた喉を潤しベットの上に横たわりながら再び暗闇の世界に身を委ねる。

異変を感じたのは深夜4時を少しまわった時だった。耳もとで何かが飛んでいる音がしたのだ。

「…勘弁してくれ」

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