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第一話 ロクブンノイチの未来

20070902135056
暇暇暇暇暇暇暇暇暇暇。
10回言ってみた。うん。暇だ。
変えたい変えたい変えたい変えたい変えたい変えたい変えたい変えたい変えたい変えたい。
10回言ってみた。うん。ちょっと喉が渇いた。
よし水を飲もう。ゴクリ。うん喉は潤った。さて次にやることは…。
金金金金金金金金金金。
10回言ってみた。そっとサイフの中を覗いてみる。増えてないか。

金もなければやることもない。夢なんてものは既に持ち方を忘れてしまった。
『変えたい』何を?わかんない。
ただ漠然と思う。
何かなければこの先の人生で大金を掴むことなんてありえない。その「何か」はいったい何なのか。待っていてもやってくるのは、退屈と憂鬱だけ。動かねば。
ただ努力と才能には無縁の自分にいったい何ができるのか。
安易な考えと安易な行動。九割九分結果は見えている未来。残り一分に安易な希望を込めて。右手右足を同時に前にだす。
いいじゃないか。やってみなけりゃわからない。そんな安っぽい言葉を信じて。

始まりは一枚のネット広告だった。
『バイト募集。体力のある男子。日給10万円。別途成功報酬有。
今の自分に満足していない方、自分の力で人生を切り開きませんか?
ぜひご応募待ってます(^O^)』
あきらかに怪しい。そもそも日給10万なんて仕事普通ありえない。到底安全な仕事とは思えないが、冗談か?それとも新手の詐欺か?大体成功報酬ってなんだ?何をやらされるんだ?失敗したらどうなるんだ?
疑いばかりが頭を過ぎる。当然だ。文字が読める奴だったら誰だって思うはずだ。この仕事はありえない、と。
最後にはニッコリと笑った笑顔マーク。とてもこの仕事が笑えるものとは思えない。

ただ恥ずかしながら最後の歌い文句に心を少し動かされているのも事実だ。『人生を切り開く』うん。いい響きだ。『自分の力で』さらにいい。
もしかしたらこんなチャンスをずっと待っていたのかもしれない。
いやまてまてこれは本当にチャンスか?う~ん…、置いといて、と。
10万円か~。1万円札が10枚。1000円札だと100枚欲しい!金が。この分だと成功報酬といわれる物もかなりの額だと思われる。大金が手に入るかもしれない。サイフに入りきらない万札。プライベートビーチで金髪ギャルを連れて歩く俺。群がる女達。ヤバイ。興奮してきた。金があれば変われる気がする。
「俺気付いたんだ~。やっぱ人生って、金じゃないよね」なんて言う奴のほとんどは、いい服を着ていい靴をはいて似合わないサングラスをかけた奴らだ。
お前らに俺の気持ちの何がわかるんだ。というか俺にお前らの気持ちをわからせてくれ。頼む気付かせてくれ。金じゃないってことに。俺も似合わないサングラスをかけた…置いといて、と。
いける。この仕事を無事こなせばその先にはきっとばら色の人生が待っているんだ。プライベートビーチで金髪ギャルを…それはもういいや。
そうだ。自分はこんなところで終わる人間ではないはず。この先必ず自分の力で自分の人生を切り開…あれ?どっかで見たせりふ…あっ!よし決めた!行こう!

まさか人殺しをやれと言うわけじゃないだろうし、ネットで募集しているんだ多少何かあっても命に危険があるとは思えない。
もし嫌だったら断ればいいんだし、ためしに話だけ聞いてみるのも悪くない気がする。そうだよ。危険だったら断ればいいんだよ。なんだ簡単なことじゃないか。
俺は今までいつだって嫌な事は嫌と言…………置いといて。

何だってやるさ。そもそも自分に失うものなんて何もない。命と健康な体と残り少ない有り金と携帯とお気に入りの服とマンガ以外は。
このままこの生活を続けるよりもよっぽどましだ。
『なんでもないような事が♪幸せだったと思う♪』という素敵な歌があったが、この際だからそれも置いておこう。

準備は整った。もはや今の自分にとって不安はたった一つしかない。自分が体力のある男子かどうか、ということだけだ。
人間なんて簡単なもんだ。多分こうやって詐欺や宗教は成り立っているんだろう。

置き忘れた現実と常識。積み上げられたそれらはピラミッドのようにそびえ立っている。目を背け前を向く。埋もれて死ぬのはごめんだ。
ただ、前に進むってことはこういう事じゃない気がするけど。

毎日続くクソみたいな生活。それはクソみたいな自分が選んだことで、責任は全部自分にある。
誰かのせいだとか、今の自分は本当じゃないとか、やればできるんだとか、この先きっとなんとかなるとか、とかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとかとか言ってる自体がもう終わってんだよ。
変われないと思うならグタグタ言わずに黙って生きてりゃいい。
ただ本当に変えようと思うなら、こめかみに拳銃を突き付ければいい。そうすりゃ誰だって言うことを聞く。
人生なんてロシアンルーレットみたいなものだ。当たりを引くかハズレを引くか、それとも引き金を引かないか。
自分に向けられた銃口の深い闇に比べたら、俺の未来なんてよっぽど明るいもんさ。

携帯のプッシュボタンを力強く押す。その瞬間通話口から機械的な女性の声が聞こえてくる。
まさか!最悪の結果が頭を過ぎる。やっぱりあの広告は…。
三秒後。
ふん。なんてことはない。サイフを開く。
クソ。まずは携帯代をなんとかしなければ。

いつか訪れる未来。
わかってる。
わかってる。わかってる…けど、けど、けどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどけどってことでしょ。
残り一分に安易な希望を込めて。
目指すは金髪ギャルが待つプライベートビーチ。
とりあえず、世界の終わりがくる前に、引き金を一回引いてみますか。
小指あたりで。
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